4年前の夏のことです。家の中、どこからともなく猫の鳴き声がする! 「まさかそんなことが…」
壁に耳を近づけると、どこから入り込んでしまったのか、中から壁をひっかく音と一緒に、確かにか細い猫の鳴き声が聞こえてきます。
板張りの壁の間、ちょうど空間になった部分にいる気配はわかったものの、どうやって助け出してあげれば良いのか、しばらく思案にくれました。
いろいろと考えた末、鶉橋さんご家族が、子猫の救出のために選択したのは「のこぎり」で壁に穴をあけること。
鳴き声と気配を頼りにあけた穴から姿を現したのは、目がやっとあいたばかりの生後間もない一匹の子猫でした。
衰弱しきった小さな子猫。本来なら母猫の愛情をたくさんもらって甘えて過ごす時期のはず。暗く狭い場所に取り残され、どんなにか心細かったことでしょう。
子猫を救出したその日から、鶉橋さんは、子猫の母親代わりになりました。
子猫を引き取ってくれる方はいないか、新しい家族探しをしながらの子育てのはじまりです。
まだ離乳前だったため、昼夜を問わず、3時間おきにミルクを与え、母猫が子猫のお尻をなめて排泄を促すように、濡らした脱脂綿を使ってお尻を拭いてあげます。
24時間、どこへ行くにも一緒の日がしばらく続きました。
その甲斐あって、子猫が何とか元気を取り戻した頃、ある方から子猫を引き取っても良いとの連絡がありました。
とにかく、離乳までは面倒をみて、あとは新しい家族のもとでしあわせに暮らして欲しい…。ずっとそう願っていたはずでした。しかし、その方が数匹の猫と暮らしていることを知った鶉橋さん。有り難い申し入れであることは充分に承知しながらも、考えた末、お断りすることにしました。この猫、1匹だけをかわいがってほしいと思っていたからです。
その後、いつの間にか、鶉橋さんの中から、子猫を手放すという選択肢は消えていました。
ある日突然、壁からやってきた猫は、『おちょび』と名付けられ、今も元気に鶉橋さんと一緒に暮らしています。
鶉橋さんのそばを片時も離れないというおちょびちゃんの日課は、朝、鶉橋さんを起こすことから始まります。一人でいるのが寂しいのか、はたまた、つまらないから起きてと言っているのか…。毎朝決まって、午前4時になると、ベッドで寝ている鶉橋さんのお腹の上に乗って朝を知らせます。
「おかげで目覚まし時計がいらないんです」と、笑顔でおっしゃる鶉橋さんは、おちょびちゃんのすべてをそのまま受け入れているようです。
毎朝、午前4時の起床。鶉橋さんとおちょびちゃんの健康的な早起き生活は、これからも続いていきそうです。 |